不調を隠すようにいつも微笑んでいる。「微笑みうつ病」の可能性も……
うつ病の中には、調子が悪いのに周囲に心配をかけまいとニコニコ微笑んでしまう「微笑みうつ病」があります。
あなたは、無理して笑っていませんか?
周囲に、調子が悪そうなのに、頑張って笑っている人はいませんか?
《「微笑みうつ病」の特徴》
からだと心に不調を抱えていながら、
周囲に人がいる時は常に笑顔を浮かべて明るく振る舞います。
一方で、一人になると抑うつ症状からふさぎ込んでしまいます。
このタイプは、発見が遅れて、うつ病としての潜伏期間が長くなる場合があります。
他のうつ病に比べると抑うつ症状やからだの不調が軽いので、
本人はただの体調不良だと考えますし、
明るい振る舞いから周りの人も「うつ病」だと気づきにくいのです。
「微笑みうつ病」は壮年期の大人に多く見られます。
会社で重要な役職についていたり、一家の大黒柱をつとめていたりと、
大きな責任を負っている人たちが、
「自分がしっかりしなくては」という思考から、病気を隠しがちになるのです。
自分で解決しようと思って病院に行かずに悪化させてしまったり、
追い込まれて自殺するなどの最悪なケースも見られます。
症状の軽さとは裏腹に、危険なうつ病といえるのです。
《「微笑みうつ病」の症状》
精神的症状は、「気分が落ち込む」「憂うつになる」などの抑うつ症状以外は、あまり表れません。
ただし、原因不明の身体的症状である不定愁訴がよく表れます。
・睡眠障害
(明け方まで眠れない、眠れても朝起き上がるのが難しい)
・午前中のミス
(午前中にぼーっとしたり、ミスを繰り返してしまい、調子が悪くなる)
・不安やイライラ
(顔は微笑んでいるけれど、言動から不安感やイライラしている様子が見られる)
・食欲不振
(食欲が無くなり、同僚とのランチを断ったりする)
・便秘、または下痢
(原因不明の便秘または下痢が2週間以上続く)
・頭痛や肩こり
(原因不明の頭痛や肩こりが2週間以上続く)
・口の乾き
(口の中がカラカラに乾いて、のどが乾いていないのに飲み物をよく飲むという行動が長く続く)
「午前中のミス」にあるような、うつ病特有の日内変動(1日の中で調子が変動する)という症状がみられます。
例えば、下記のようなパターンがあります。
・午前中はぼーっとして、仕事などでミスを起こしがち。
話しかけるとニコニコとして明るく振る舞い、退社まで頑張り通す。
《「微笑みうつ病」の治療や受診について》
他の重いうつ病と比べると、重症化はしていませんので、
適切な診断を受けて、きちんと治療を行えば、短期間で治る可能性も高くなります。
「微笑みうつ病」は、うつ病全般に言えるように、
責任感が強くて真面目な人が発症することが多く、
自分の体調よりも仕事や勉学を優先してしまうことが要因になっています。
自覚できるようでしたら、診療内科などを受診することが良いでしょう。
しかし、本人は心配をかけることを恐れて、
体調不良が「周囲に気づかれないように」努力をしているため、
周りの人が露骨に心配すると、いっそう努力を続けてしまう可能性があります。
受診を勧める時には、「体調が悪そうで、”わたし”が心配だから」などと、
少し遠回しな受診のススメ方をするといいかもしれません。